『Booking Car』で公用車管理をデジタル化
移動の効率化で実現する、行政サービス向上への好循環

(左から右)熊本市管財課 課長 的場様、宇野様、岡本様

熊本市役所

事業内容 地方公共団体
設立 1889年
従業員数 6,233名
導入台数 50~60台
URL https://www.city.kumamoto.jp/

導入前課題

・公用車の予約は前日から。予約できない場合は当日の朝に並んでいた
・貸出状況の把握・車両管理を紙で行っていたため手間がかかっていた
・公用車の貸出状況は集中管理室の担当職員だけが把握。利用する職員は確認が出来ず、情報は共有化されていなかった

導入効果

・いつでもどこでも予約可能に。時間の効率化と心理的負担の軽減を実現
・DXにより情報が一元管理され利用実績もスグにわかるようになった
・利用状況が視える化され、職員同士での調整が可能に。公用車をさらに有効活用できるようになった

熊本市役所は2022年10月、社用車専用クラウドサービス『Booking Car』を導入しました。
これにより従来紙ベースで管理されていた約60台の公用車がスマホなどから簡単に予約できるようになり、車両管理の業務が効率化されました。

行政への『Booking Car』導入は初めてのことですが、どのような経緯があったのでしょうか。
車両管理にあたる熊本市役所管財課から、的場様、宇野様、岡本様に話を聞きました。



職員による公用車利用の効率化は、地域への貢献にもつながる

熊本市管財課 課長 的場様(ONE PIECE熊本復興プロジェクト麦わらの一味「ヒノ国」復興編 熊本市動植物園チョッパー像前にて)

──まずは熊本市役所の業務および公用車を利用するシーンについて教えてください。

熊本市管財課 課長 的場様(以下、的場様):福祉や教育、まちづくり、観光など市役所の業務は多岐にわたりますが、どの業務においても「現場」に出かける場面が必ずあります。

例えば、生活保護のケースワーカーは受給者の家庭を訪れますし、建設工事の現場で品質管理をしている職員もいます。

ですから公用車は、私たちの仕事になくてはならないツール。中でも本庁舎に勤務する職員用の貸出公用車を約60台管財課で管理しています。




──そのような中でTMSのサービスをどのように活用していますか?

的場様:TMSさんからのご提案で『Booking Car』を導入しています。従来、熊本市役所は紙ベースで車両の貸出管理を行っており、それが公用車を利用する職員にも負担をかけていました。

わざわざ書類を用意して窓口に持っていく必要があり、しかも、利用前日になるまで予約ができなかったのです。貸出業務も非効率的で、貸出窓口には朝早くから行列ができていました。これでは職員も困ってしまいます。アナログだった車両管理をDXできないかというのが、『Booking Car』導入のきっかけです。

そもそも東京などとは違い、熊本市内の移動は車が中心です。面積は広く、中心部を少し離れると農村地帯が広がっており、仕事をするにも車が要ります。それは行政においても同じ。市民のために働く職員たちの「足」となる公用車に問題があれば、行政サービス自体に支障が生じかねません。『Booking Car』導入の狙いは、職員たちの仕事を支えること。職員たちが働きやすい環境をつくることは、熊本市民のためにもなると信じています。



いつでも予約が可能になり、予約待ちによる朝の行列が解消

──『Booking Car』導入以前の車両管理について、具体的に教えてください。

熊本市管財課 宇野様、岡本様

熊本市管財課 宇野様(以下、宇野様):車両管理にあたる管財課とは別に、車両貸出の窓口になる「公用車集中管理室(以下、集中管理室)」が本庁舎の地下1階にあり、専任の職員2人が業務に従事していました。

公用車を予約するには紙書類を提出する必要があるのですが、わざわざ上司の印鑑をもらわなければならず、しかも、予約受付は「前日午前」から。さらに、前日に予約できる枠は20台に限られていました。残り40台は利用当日の朝にならないと予約ができなかったのです。

それも当日朝の受付が始まると数分で貸出終了となる状態。ですから、集中管理室の窓口には朝から長蛇の列ができていました。公用車を借りたい職員には、大変な手間だったと思います。車種の選択も、集中管理室の職員に委ねられていました。乗車人数や荷物の有無ぐらいしかわからないままの配車で、業務内容に応じた適切な配車は難しかったと思います。

的場様:公用車の駐車場は2つ、1つは本庁舎の隣、もう1つは少し距離が離れたところにあります。職員は皆、職場から近い駐車場の車に乗りたいし、車両の貸し出しは「早いもの順」。そうなると朝早くから列に並ぶしかなかったのです。それでも予約ができない日もあるわけで、どうしても公用車を使いたい職員には大きなプレッシャーになっていました。予約がとれなかった場合は、バスなどの公共交通機関を利用したりと、職員たちは苦労していました。

熊本市管財課 岡本様

熊本市管財課 岡本様(以下、岡本様):管理者側の視点だと、管財課は本庁舎の6階にあり、貸出窓口の集中管理室は地下1階にあったことから、急な車両故障があったときなど、情報共有が十分にできなかったですね。

例えば、修理業者に依頼するために管財課から電話をかける必要があるのに、職員から「故障した」と連絡を受けるのは集中管理室。これでは、車がどんな状態にあるのかなどの情報収集に時間がかかりますし、集中管理室を間に挟む分、正確な情報をつかめないこともしばしばありました。

的場様:効率的な貸し出しができているかどうかも定かではありませんでした。見かけ上は、60台ある公用車は常に予約がいっぱいでした。
1日1回でも公用車が使用されると「その日は車を使っている」と認識されるため、業務時間中切れ目なく車両が使われているのかどうかわかりませんでした。実際、使用するより長い時間を予約したりするケースがあったとも聞いています。



──そうした問題点は『Booking Car』導入により、改善されたのでしょうか。

的場様:公用車を利用する職員にしてみれば、いつでも予約できるようになり、ずいぶん楽になったと思います。

「予約できないかもしれない」と心配することも、朝早くから列に並ぶ必要もなくなったわけですから。公用車の利用状況が職員たちに「視える化」された影響も大きいですね。

60台の公用車について「〇〇課の〇〇さんが〇時から〇時まで、〇〇に行くために予約している」などとわかるのです。すると「本当に〇時まで使う?」と確認したり、「行き先が同じだから一緒に乗せてくれる?」と職員どうしで相談したりできる。「視える化」が職員たちに、公用車を上手に利用するよう促している側面があると思います。


熊本市管財課 宇野様

宇野様:管理者側の業務効率も大きく向上しました。

これまでアナログで管理していた予約や運行状況は、すべてデジタル化。いつ誰がどの車に乗ったかもすぐにわかるので、紙資料による日報の中から探し出す必要がなくなりました。

車両故障が起きても、PC上で故障内容を把握できますし、職員と直接やりとりができるようになりました。

的場様:導入により管理業務の効率化を図ることができ、その効果として人員削減やその他経費を含めトータルで削減することができました。

いままで貸出業務を行っていた集中管理室は、効率化により場所自体が不要となり、その場所はワークスペース等に活用できるなど場所についても有効活用できました。

効率化を図るだけではなく、利用する職員側からも利便性の向上が図られ好評のようです。



緊急対応時もすぐ予約、キーボックス利用による無人貸出も

──実際に『Booking Car』を日々の業務に利用してみて、使い勝手はいかがでしょうか。

『Booking Car』の予約画面(イメージ)

熊本市高齢福祉課 島田様(以下、島田様):『Booking Car』導入前と比べて、良くなったところが本当にたくさんあります。

まず公用車を「確実に」予約できるようになりましたね。
以前は、前日予約を試みても「早いもの勝ち」になり、予約できないこともありました。その場合は、当日朝早くに出勤して窓口に並ぶしかなく、それでも予約できず他の移動手段に変更することもありました。『Booking Car』導入後は、利用約2カ月前から確実に予約がとれるようになり、とにかく便利です。

予約画面に車の写真が掲載されているのもありがたいです。「この車なら荷物をたくさん乗せられるな」とか「今日は1人だからこの車で」とか、業務内容にあわせて車種を選べるようになりました。
駐車場から公用車を探すときも迷わなくて済みます。

 

アプリでの予約操作を実演される熊本市住宅政策課 鶴様

熊本市住宅政策課 鶴様:体感的には『Booking Car』導入によって公用車利用に要する時間が10倍くらい効率化されたように思います。

予約の度にいちいち紙書類を用意して上司の印鑑をもらう必要もなくなりましたし、公用車が空いている時間は細かく「視える化」されて、予約を入れやすくなりました。公用車の利用頻度が高い職員ほど、大きな恩恵を受けているのではないでしょうか。

島田様:私の業務にもいい影響が出ています。私は市内に27ヶ所ある「地域包括支援センター」という高齢者の相談施設を担当しています。
時折現場に出向いて職員と話したり、住民向けの介護予防活動を行うのですが、利用前日まで公用車を予約できなかった頃は、ちょっと焦っていました。

予約できなかった場合のことを考えないといけないですし、当日朝の予約を忘れないようスマホのリマインダーを設定したりして。確実に予約できるようになった今、そうしたストレスから解放されました。このような便利なシステムなら、早く導入してほしかったと感じています。

スマホからいつでも簡単に予約できるようになったのも嬉しい変化です。高齢福祉課では時折、市民からの相談など、ただちに対応するべき案件が発生します。そういうときにもすぐ車を手配して現場に駆けつけることができる。「緊急対応のときに使いやすくなった」という声は、周りの職員からも聞こえてきます。



キーボックスを操作する熊本市高齢福祉課 島田様

──「公用車の鍵を無人で安全に受け渡し管理できる」
キーボックスもご利用いただいています。

島田様:はい。以前は、集中管理室の職員さんと直接鍵の受け渡しをしていて、そこでも列に並ぶ必要があったのです。

また、鍵の返却が夕方6時を過ぎるようだとあらかじめ連絡を入れないとならず、そのために運転する車を止めて電話することもありました。

今では自分のタイミングで鍵の受け渡しができるようになり、助かっています。




85%の職員が「業務効率化につながっている」と回答

──より快適にサービスを利用するため、TMSに対するご要望がありましたら、是非お聞かせください。

熊本市管財課 課長 的場様、宇野様、岡本様

的場様:導入後に実施したアンケートによると、9割の職員が『Booking Car』導入で「利便性が向上した」と回答しました。
「業務効率化につながっている」と回答した職員も85%にのぼります。これは予想以上の成果。率直に「『Booking Car』を導入してよかった」と思っています。

一方で、日々『Booking Car』を利用している職員から、機能や使い勝手の面でリクエストの声も挙がっています。例えば「車を降りるだけで返却手続きを完了できないか」などですね。引き続きTMSさんの力をお借りしながら、システムの改善を進めたいと思っています。

もっとも、ご相談したいのは『Booking Car』だけではありません。トヨタさんは車両のプロフェッショナルです。安全対策に関するご提案も是非いただきたいですし、MaaSに代表される新しいクルマについても教えていただきたいと、常々思っています。

私たち管財課の役割は、市民のために働く職員たちを支え、彼らの力を引き出すことにあります。公用車の管理もその1つです。職員が困っていることがあれば、なんとかしないといけない。それが市民の皆さまのためにもなり、いっそう住みやすいまちづくりにつながると思うのです。これからもご協力をお願い致します。

(取材・執筆:東 雄介 編集:桐生 幹太 撮影:土方 翔太)


TOPへ戻る